2008年10月10日

『稲妻』(ストリンドベリ作・花島宣人演出)

アクターズ・ジム研究公演。中板橋の新生劇場にて。

ストリンドベリの芝居を2000円ぽっち(予約で1800円)で見られるという、大変喜ばしい試み。

ストリンドベリはイプセンのライバル作家にして、オカルティズムやら錬金術やらにのめりこんでキチガイ扱いされた、ベルイマンのフェイバリット作家。ベルイマンは祖国で飽かずに何度も彼の芝居を上演したらしい。「令嬢ジュリー」「死の舞踏」「父」など、代表作と呼ばれるものが載った全集は読んだけど、図書館に眠っていたそれは、カビ臭く、埃だらけで、アレルギー持ちにとっては大変つらい読書だった。そのこともあって、こういう上演の機会は非常にありがたい。

穏やかな風情に微笑みを貼りつけた老紳士。だがそれは繕われたものにすぎず、達観や枯淡の境地にはほど遠い。彼は自分を捨てた元女房への憎悪を人知れず募らせ、その女房が突然現れ、彼女が不幸な境涯であると知るや、憐れみという名の享楽に意地悪く耽溺する。彼女も彼女で、元夫の家で女中として働く若い娘に嫉妬の炎をメラメラと滾らせる。ここには完全な人間などいない。時折ギラギラッと閃光を放つ稲光が、年齢を重ねても決して枯れることのない人間の生々しい負の感情を象徴している。

万事きれいに納まっていく終盤が物足りないが、クライマックスに用意された、ベルイマンにも絶大な影響を与えたと思しい、目をそむけたくなるような男女の罵りあいが気持ちよかった。

ただ……芝居としてはどうなのかな。演技・演出がカチッとはまる瞬間が、最後までなかったような気がする。俺が見たのが初日の初回ということで、ないものねだりなのかもしれないけれど、もう少し、うねりというか、緩急があっても良かった気はする。

特に主人公の老紳士役を務めた井岡薫という役者さんは、髪の毛を剃りあげ、身のこなしに律儀さと老いとを注意深く刻みつけ、丹念な役作りをしたと思うけれども、見る者の背筋を凍りつかせるような底意地の悪さに欠けている。もっと彼のキャラクターの悪辣な部分に踏み込んで、激越な表現に挑んでも良かったんじゃないか。それが必要な役柄だと思ったのだが。

女優陣はメインの久保田涼子、月尾由佳、どちらも良かった。顔立ちが劇の世界観にぴたりとはまっていた。前者は「年老いた」という役の割に、あまりにも若すぎではあったが。

と、偉そうなことを言っているわけですが、個人的にはすばらしい企画だと思いました。もっともっとこういう芝居をたくさん見たい。ニナガワのシェイクスピアも二本くらい見て、面白かったけど、高すぎるし、あんな大がかりな演出やスターやアイドルなんて別に見たくない。50人も入ればいっぱいになるような小さな劇場で、1000〜2000円くらいの価格で、古典演劇をたくさん見たい。だからこういう上演は凄く嬉しかった。

夜、シナリオ直しが始まる。

「オナホールのテンガって知ってる?」という話に始まり、「で、テンガの話に戻るけどさ…」で終わった。

結論。テンガ、すごく良いらしい。

http://www.tenga.co.jp/
posted by minato at 17:56| 東京 ☁| Comment(2) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごく良いですよ。
まるで初体験です。
Posted by matsue at 2008年10月13日 01:57
テンガ、なんだか凄いらしいですね。

シナリオの直しよりはるかに真剣に、雄弁に、切実な調子でその良さを語っておりましたよあの方は…。
Posted by minato at 2008年10月13日 14:00
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