2009年02月08日

「棟梁ソルネス」

昨日は午後に「M」四稿…じゃなくて三稿提出し、精も根も尽き果て、一時間寝て新宿国際名画座で『本番オーディション やられっぱなし』(佐藤吏監督)。女優をかわいく撮ろうという意気込みがあった。その後、国映「金村くんを囲む会」。金村さんはこの映画の脚本家。さくら水産閉店まで。途中から意識死んでた。西尾監督ごめんなさい、さすがにオールナイト無理でした…。

今日は「イプセンを上演する会」による「棟梁ソルネス」。このイプセン後期を代表する戯曲は「目に見えるもの」より「目に見えぬもの」に多くを預けて生きているような人間にとっては、もう「ヒィヒィ」と身を捩らせたくなるような大傑作。リアリズムを基調としながらも、ちょっとぶっ飛んだ人物設定(ロリータであり小悪魔でありファム・ファタールであり妖精であり狂信者でありその実ソルネス自身である、すばらしきヒルデ!)、見る人によっては頭がおかしいとしか思えないであろうトロル(魔物、あるいは妖精、あるいは無意識の底に蠢く種々の欲望や暴力)との共生やら、夫婦関係の深淵やら、建築=創作行為の根幹的な姿勢をめぐる葛藤やら、若い世代から追い落とされるベテランの不安やら、因果応報やら、まあ、あきれるくらいあらゆる主題がぶちこまれ、巧みに織られ、きっちり語られ、最終的には「神」へと挑むソルネスの墜落劇に結実する。簡単に要約できませんわ、こんなの。

肝心の舞台は……いや面白かった。舞台となる北欧を律儀に再現したようなウッディーな美術が目を引く。ソルネスを演じた柳本達也、劇のキモとなるヒルデを演じた小川恵子、この両者の一生懸命な熱演が二時間四十分の上演時間をちゃんと支えていた。最初彼らが舞台に登場した時は「若すぎるだろう…」あるいは「若くなさすぎだろう…」と正直思ったりもしたのだけれど、彼らなりのキャラクター造形に揺らぎがなくて、自然と受け止めることができた。特にヒルデ、良かったです。今以上に自由奔放な演技でも良かった気はしましたが。魅力があったので。

良くも悪くも(ホントに良くも悪くもだと思う。個人的には演技者にもっと自由を与えて良いように思う)ケレン味のない演出なので、二幕などは少々ダレた(原作でもちょっとダレる)。けれど、三幕目は幕開けからエンディングまでずっと手に汗握った。ここぞとばかりに漆黒の上着を纏ってソルネスが現われ、彼が舞台を去り、一同が彼の運命の結末を見てしまうあたり。わくわく、ぞくぞくした。こうでなくちゃ。

もちろんそれは、イプセンの戯曲の途轍もない強度に依る部分が大きいんだけど、やっぱナマの舞台で見ないとその戯曲への理解って絶対に広がらない。おいらはこの方々のお芝居を、完全に「勉強」として見ている。個人的にはものすごく重要な勉強。でも帰り道、環七通りで強風に煽られながら「いやぁ、良かったな」と呟いてしまったのだった。難しいこと考えずに普通に楽しんでいた。これからもがんばって公演を続けてほしいものです。
posted by minato at 19:34| 東京 ☀| Comment(0) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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