2011年07月27日

『ひかりをあててしぼる』(佐藤寛子主演・坂牧良太演出)

■昨日拝見した舞台『ひかりをあててしぼる』は、ひとまず「DV」を描いた芝居、と言うことは出来る。DVを描く上で必要な約束事、人物の背景だとか、暴力を振るう側の屈折、振るわれる側の屈折だとかを、いわば段取りとして踏まえるのが前半だとすれば、後半は一気に「おんな」の魂の赤裸々へと焦点を絞っていく。DVは玄関前におかれた飾りにすぎないのである。いや参った。ヒロインを務める佐藤寛子さんのポテンシャルの高さよ! 刻々と変化する美しい顔立ちや佇まいに見とれているうちに、いつのまにか心を持っていかれてしまった。だがそれは蟻地獄のごとき悪夢なのだ。ああいった女性の底知れなさを目にすると、おれなんかは全身の血が騒いでしまう。

■主題が主題なので、おそらくこの舞台は耐えられないという人もいるだろうし、ふつうのお芝居としてふつうに受け止める人もいるだろう。個人的には、映画であれ舞台であれ、力量のある女優を中心に据え、彼女の持ち得る力をすべて引き出そうという作り方が大好きだし、何というか「しっくり」くる。一人の女性の魂の深淵に降りていくと、そこには倫理や道徳を超えた、なんだかよくわからない血まみれの生命体が息づいている……そんな世界。だから、そうした世界観にきっちり則ったこの舞台は大変よかった。そしてその世界観を細い体でガッツリ担った佐藤寛子様はすばらしいと、何度でも連呼しておきたい。

http://www.inveider.com/hikari
29日までですよ。公式サイト

■帰路、いろいろなことを考えていたのだが、ベルイマンが好きな人間は、「神の沈黙」に思いをはせたいのではなく、女というなんだかすごい生き物に魂を揺さぶられたいだけのマゾヒスティックな人種なのだよな、と思った。自分のことですか? はい、自分のことです。
posted by minato at 12:12| 東京 ☀| Comment(0) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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